上を見よう。

先日、ある高齢の方にお会いする。
趣味はお菓子作り。
訳あってしばらく一緒に暮らしている孫が「おばあちゃん、お菓子作って!」と言うそう。
手作りのお菓子を食べれるお孫ちゃんは、幸せだと思った。
そんな方だけれど、家の中のことは出来ても、家の外には出れない。

歳をとるとなかなか外に出るということが難しくなる。
テレビなどで、「お元気ですねー!」と言われる100歳近い元気な方は本当に少ないはず。


病気になりやすいし、病気になると体力が落ちてしまう。
昨日まで出来ていたことが、突然できなくなる。
その不安と悲しみと受け入れられない現実に、押しつぶされそうになりながら、毎日を過ごしている。
私はまだ若い。
どんな気持ちも、どんな言葉も罪な気がしてしまう。
真剣に聞いてくれる姿に、できるだけ正直な言葉を使って想いを伝えるけど、話下手な私はより下手になる。


そんなお菓子作りの好きな方が、こんなことを言った。
「上(良い状況)の人は見ないようにしてるの」
すごく悲しい気持ちになった。
けして悲観的には言わず、むしろ表情は前向きだった。けれど、そうやって折り合いをつけて頑張っている人は、一人になったときの心細さも出せずにいる。私は何にも言えなくなってしまう、それは、その方の人生の長さのせいだと思う。


私の好きな歌
上を向いて歩こう
見上げてごらん夜の星を


上ばかり見ててもキリがない。
だけど、時々は上を見て欲しい。
手の届かない空を見上げて欲しい。
よそ見をしたり、後ろを振り返ったり、たくさん見て欲しい。
皆、歳はとるし、未来はどうなってるかも分からない。
私は若いから、言える。
私は、限りある一生に出会った人たちとは、一緒に空を見たい。
一瞬でも、一緒に見上げたい。
そうやって、私は若さの罪をこれからも積み上げるのだろうね。